踊れ全力ピエロ

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三度目の殺人 − 弁護士vsサイコパス

絶賛上映中の「三度目の殺人」を観てきました。

ネタバレ含むと思われますのでご注意ください。

 

これ、わかりにくかったと思うんですが、というか僕も終わるまで確信は持てなかったんですが、最後まで観て完全に確信しました。

「三度目の殺人」予告 - YouTube

これ、サイコパス映画です。

 

法廷サスペンスとしても完成度が高いと思いますが、それよりも、犯人のサイコパス性、サイコパスと呼ばれる人間がどういうものか知ってないと理解しづらいように思いました。なんかよくわからないけど狂気は感じる、くらいで終わってしまうかも。

 

サイコパスとは、日本語では反社会性パーソナリティ障害と呼ばれています。

簡単に言えば究極の自己中。他人の気持ちがまったくわからない、わかろうとしない、どこまでも被害者思想。その行動には理由がなく衝動的、やりたいからやる。そして口が上手い。しかし基本的にその場しのぎで自分に非がないように話すので矛盾が生じる。そんな人種ですね。

でも病気とはされないそうなんですよ。一応社会の中でルールに則って暮らせるので。サイコパスは凶悪犯罪を犯して注目されることが多いですが、圧倒的大多数が普通に社会生活を営んでいます。

 

三度目の殺人。この映画で起こった殺人事件。

その犯人として扱われる役所広司さん演じる人物「三隅」がほぼ確実にサイコパスなんですよ。

でもって、その事件担当で彼とやりとりを重ね、振り回される弁護士「重盛」役が福山雅治さん。

 

ざっくりあらすじをいうと、重盛は勝ちにこだわる弁護士で、勤め先の工場の社長を殺して火をつけた疑いで逮捕された三隅の弁護を担当することになります。三隅は殺人事件の前科持ちで今回で殺した人数は三人目、犯行も自供しているためほぼ死刑確定状態。しかし重盛は無期懲役に持ち込みたいため調査を始めるわけです。そして調査を進めるほど、三隅はコロコロ言うことを変えるし、被害者の娘とも意外な接点が見えてくるし、一体どうなっているんだ…とぴったりの目が出ないせいでいつまでもあがれないすごろく状態になっていくわけですね。

 

あと大事なのが、広瀬すずさん演じる被害者の娘が何気なく、だけど誰も口にしなかった法廷に対する疑問。でもそれは誰かが語ってると思うのでここでは割愛しちゃいますけども。

 

本来、人は行動する時には理由が伴うわけです。そしてそれは歳を重ねて大人になっていき、社会に組み込まれていくうちに制限されていき、無意識にその中でやりくりしていくようになる。守るものができれば、それが行動の理由になる。

 

しかし、三隅にはそれが一切感じられない。後悔しているのか、とか聞いても「はい」と返事はしますが全然そう思ってるように感じないんですよ。なんで後悔するの?ってトーンなんですよ。それを出せる役所広司さんの演技は素晴らしいんですけどもね。

 

急に人が変わったように怒っていることもあれば、突然主張を変えたりしてそれを信じろと言う。そしてそれがいずれも冗談と思えない態度。最初は冷静に対処していた重盛も徐々にペースを乱され、その行動、言動にひとつひとつに理由があるのではと奔走するけども、それはいつの間にか三隅に翻弄されている結果であり、観てる側もそうなっていきます。

 

事件は様々な人が絡んで二転三転しますが、要は善良な人たちがサイコパスに振り回されるのを観る映画だったんだな、と僕は思いました。

 

その決め手となったのが、最後に重盛があなたがあの時こう言ったのはこういうことか?と問うシーンで、ここで三隅は「それ、良い話ですね」と答えるんですよ。これでした。彼の今までの行動に意味なんてなかった。それが浮き彫りになった台詞であり、種明かしになっている台詞だなと感じました。

 

うーん、三度目の殺人、良いサイコパス映画でしたね。